概要:SNSには「AIの使い方を教えます」という発信が溢れています。しかし、業務改善の提案から社内定着のサポートまで、AI自身がこなせるようになった今、この種の”AI顧問ビジネス”は構造的に立ち行かなくなりつつあります。この記事では、その理由と、これからのAI時代に本当に価値を持つ2つの人材について整理します。

【結論】

最新ツールの使い方や知識の非対称性でマウントを取る”にわかAI顧問”ビジネスは、すでに終わりに近づいています。業務改善の提案から社内定着のサポートまで、AI自身が担えるようになっているからです。これからのAI時代に価値を持つのは、AIが本質的に苦手とする非連続なアイデアを生み出す「ずらしの視点」を持つ人材と、リスクを引き受けて決断を下せる人材の2つに集約されます。

なぜ「AIの使い方を教える」ビジネスが終わりつつあるのか

SNSを開くと、専門用語を並べて自らの権威付けをする「AIコンサルタント」の発信を頻繁に見かけます。官公庁や大企業向けの実績を強調し、開発者向けのツールや用語を持ち出して、知識の非対称性でマウントを取ろうとする発信です。

しかし、こうした発信の裏側にある実態(閲覧数やエンゲージメント)を見ると、華々しいアピールの割に、世間からの関心は驚くほど薄いことが少なくありません。

AIエージェントが業務改善の相談から社内定着のサポートまで担えるようになったことで、単に”使い方を教えるだけ”のAI顧問というビジネスモデルは成立しにくくなっています。 「作り方を教える」こと自体に、もはや希少価値がない時代に入っているためです。

想定読者とのミスマッチという致命的な弱点

この種の発信には、しばしば「ターゲット」と「語る技術」の間に大きなミスマッチが見られます。

一般的な中小企業の経営者や個人事業主に向けて話しているはずなのに、エンジニア向けの開発ツールやバージョン管理システムの知識を持ち出してマウントを取ろうとする。これは手段と目的が逆転しています。

AIをよく知らない相手に高度な専門用語で威圧することはできても、その企業に眠っている本当に詳しい人材の目はごまかせません。 どんな企業にも、自ら最新の情報を追いかけ、検証を重ねている社員が必ずいます。外部から来たコンサルタントが表面的な言葉でドヤ顔をした瞬間、「この人は実は分かっていない」と見抜かれ、静かに契約を切られるのは時間の問題です。

「教える側」こそが情報の鮮度で淘汰されるという皮肉

AI領域の技術的な進化のスピードは非常に速く、ここにもう1つの皮肉があります。

AI領域は情報の更新速度が非常に速いため、”教える側”に回ってインプットを怠った瞬間に、その知識は陳腐化します。 官公庁や大企業向けの研修は、企画から実施まで数ヶ月かかることも珍しくありません。その間にも、世界中で新しいモデルやサービスが次々と発表されています。教える立場に安住し、自らの学びを止めてしまった瞬間から、その人の知識は急速に古びていきます。

月額固定費のAI顧問契約が長続きしない理由

以前の記事(AIを”活用する”とはどういうことか)でも触れましたが、月額固定のAI顧問契約には構造的な限界があります。

導入から1〜2ヶ月もすれば、経営者から必ず問われるのは「これで利益はいくら増えたのか」「誰の人件費が削れたのか」という実利の話です。「作業が少し早くなった」という程度の改善では、この問いに答えることはできません。単発のセミナー料ならまだしも、年間で社員1人分の人件費に匹敵するような顧問料を払い続けるだけの理由を、多くの企業は見出せなくなっていきます。

そもそも「AI導入の相談」自体をAIにできてしまう時代

そして、最も本質的な変化がここにあります。

部署や経営の壁を越えた業務改善のアドバイスや、ツールの選定、社内への定着支援そのものを、AIと対話しながら進められる時代になっています。「この業務フローをどう効率化すればいいか」と直接AIに問いかければ、経営戦略から現場のオペレーションまでを踏まえた解が返ってくるようになりました。

つまり、単に「AIとの間に立つだけ」のコンサルタントは、優秀で低コストなAIそのものへアクセスするための取次役に過ぎなくなっているのです。誰もが直接AIと対話できる時代に、中途半端な取次役の存在価値は急速に薄れていきます。

AI時代に生き残る2つの人材

作業も分析も相談対応もAIがこなせるようになった時代に、それでも価値を持ち続ける人材とは、どのような存在でしょうか。

AI時代に価値を持つのは、AIが本質的に苦手とする非連続なアイデアを生み出す「ずらしの視点」を持つ人材と、リスクを引き受けて決断を下せる人材の2つに集約されます。

1つ目は、「ずらしの視点」を持つアイデアマンです。 AIは過去のデータをもとに無難で論理的な最適解を導き出すのは得意ですが、ゼロから何かを生み出すこと、あるいは別の業界のやり方を強引に掛け合わせるような、非連続な発想は本質的に苦手です。AIという優秀な実行部隊に「何を考えさせるか」という問いそのものを立てられる人材は、この時代においてむしろ価値を増しています。

2つ目は、リスクを引き受けて決断できるリーダーです。 AIがどれほど精緻なシミュレーションを提示できても、その結果に対する責任を引き受けることはできません。失敗した場合のリスクを背負って判断を下すのは、最終的には生身の人間の役割です。そして、その決断に周囲を巻き込むには、データだけでは足りない、熱量や人間性が必要になります。

まとめ

最新のAIツールを知っているかどうかという知識の非対称性で価値を示せる時代は、終わりに近づいています。これからは、AIを壁打ち相手として使いこなしながら、AIには生み出せない非連続なアイデアを提示し、リスクを引き受けて決断と説得ができる人材だけが、ビジネスの最前線に立ち続けることになります。

BroadPeakは、AI教育・投資教育・DXコンサルティングを通じて、この「ずらしの視点」と「決断力」の両方を育てる人材育成を支援しています。


本記事は、BroadPeakのAI教育・投資教育・DXコンサルティングの知見をもとに執筆しています。特定の個人・サービスを名指しで批判するものではなく、一般的な傾向についての考察です。